『ジュディ 虹の彼方に』は、子供には見せられない『ハリウッド残酷物語』だ。

映画レビュージュディ・ガーランド, レネー・ゼルウィガー

子役時代の大活躍で精神的なプレッシャーを抱え、不遇な人生を歩んだという伝説の女優・ジュディ・ガーランドさん。彼女のラストステージに起きた”ある奇跡”とは…。

今回は、レネー・ゼルウィガーさんが伝説の女優を演じ、本年度アカデミー賞主演女優賞に選ばれた『ジュディ 虹の彼方に』について紹介していきたいと思います。

あらすじ

『オズの魔法使』の主演として、一躍ハリウッドのスターダムに駆け上がった天才子役・ジュディ・ガーランド。しかし、そんな彼女を取り囲むハリウッド業界には、過重労働やセクハラ、薬物問題など、根深い闇が蔓延していた。

トラウマを植えつけられた幼少期から数十年。心身ともにボロボロになりながら、歌手として活動する彼女はロンドンでの連続公演を迎えていた。

47歳の若さで亡くなった彼女がラストステージで経験した“ある奇跡”とは…。

ハリウッドの黄金期に活躍したものの、影ではとてつもない苦労を抱えていたという実在の女優・ジュディ・ガーランドさん。そんな彼女が精神的に疲弊しながらも必死に舞台へと立ち続ける姿に心が痛む切ない伝記映画でした。

ジュディ・ガーランドさんとは

本作のモデルとなったのは7歳の頃に歌手としてデビューし、その後はミュージカル女優としても有名になったジュディ・ガーランドさん。

17歳の頃に主演した『オズの魔法使い』で、一躍、スターの道へと駆け上がった彼女ですが、その裏には様々な苦悩が隠されていました。

会社の意向でスリムになることを要求され、覚せい剤を強要されていたことや、学校や演技のレッスン、映画の撮影と多忙なスケジュールゆえに削られていたという睡眠時間、さらには撮影現場における大人たちからのセクハラまで…。

一見華やかに見える彼女の私生活は周囲の大人たちの恐ろしい思惑の数々によって支えられ、その事実が彼女の精神を少しずつ蝕んでいきました。

19歳で結婚、翌年に妊娠したものの、中絶を経て離婚。

その経験以来、一気に神経症や薬物中毒の影響が出始めたという彼女の人生。それは、まさしく「悲劇のヒロイン」と呼ぶべきものでした。

 

本作で描かれているのは、そんな彼女の晩年。

亡くなる半年前に行われたというロンドンでの歌唱公演の様子を、子役時代の回想シーンも織り交ぜて描いていく構成には、まさしく彼女の人生が集約されていたように思います。

ある女優の人生の物語として…。

タイトルから『オズの魔法使』の舞台裏などが描かれると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、前述の通り、本作で描かれるのは彼女の悲劇的な人生。

そのため、『オズの魔法使』の舞台裏を知りたい方や、ミュージカル映画が好きな子供と一緒に鑑賞しようと考えている方には、正直、オススメは出来ません。

しかし、これまで描かれることのなかった女優本人の人生を知ることが出来るという点では、かなり見ごたえのある一作だったのではないでしょうか。

 

様々な苦境に立たされ、精神的にも追い詰められていく彼女の様子は、見ている側にとっても、かなりストレスを与えられる鑑賞体験にはなります。

しかし、それを乗り越えた先には大きな感動が待っているはず。

特にクライマックスに訪れるラストステージでは、自然と涙がこぼれてしまう奇跡の一瞬がありました。

 

本国・アメリカでは彼女自身がバイセクシュアルであったことも由来して、LGBTQのシンボルとしても有名だったというジュディ・ガーランドさん。

日本では、そのイメージが浸透していないため、クライマックスの感動は少し薄れてしまうかもしれません。

しかし、現在、同性愛解放運動の象徴として使われている「レインボー・フラッグ」が、彼女の代表曲『虹の彼方に(原題:Over the Rainbow)』に由来していることなど、ある程度の予備知識を持っていると、より、そのカタルシスは深まるはず。

ぜひ、それらの要素が、劇中でどのように扱われるのかにも注目して鑑賞していただきたい一作でした。