【映画】「架空OL日記」は現代版『土佐日記』、銀行員として働く女性たちの日常のあるあるを描いた異色コメディ。

映画レビューバカリズム

今回は、バカリズムさんが原案・脚本・主演を務めた現在公開中の新作映画『架空OL日記』について紹介していきたいと思います。

あらすじ

「冬の月曜の朝は憂鬱…。」

今日も電車に乗り、会社へと向かう銀行員の私。

同じ職場で働くOLの仲間たちと些細な会話で盛り上がる彼女の日常は続く…。

韓国からやって来た新たな社員や、少し変わった上司の女性課長、主人公の地元の友達なども登場し、彼女のありふれた1年間を描く。

バカリズムがOLを演じた異色コメディドラマの劇場版。主人公の1か月を追ったドラマ版から1年間の物語へと拡大した本作は新キャラクターの登場によって、より主人公の奇妙さが浮き彫りになり、バカリズムワールド全開と言える1作になっていました。

「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり。」

これは平安時代に歌人である紀貫之が女になりきって書いたという『土佐日記』の冒頭部分。

当時、男性の日記は漢文でつづられると決まっていたため、得意分野の仮名文字を使いたかった彼は身分を装って書いたとも言われている有名な文学作品ですが、バカリズムさんが女性になりきった本作にも通ずるところはあるのかもしれません。

なぜなら、『架空OL日記』の原案となったのはバカリズムさんが2006年から始めた空想ブログだったから。

最初こそ身内ネタとして始めた些細なブログだったそうですが、人気は瞬く間に広がり、書籍化、ドラマ化、そして、今回の映画化に至ったのだとか…。

ちなみに、今回の映画版でも主演を務めるのはバカリズムさん本人。

ブログが持っていた独特の世界観を再現するために、他の配役は考えられなかったという彼は、今回も渾身の女装に挑んでいます。

また、過去のブログを読んでいると、本作の中で、その内容が再現されている部分も多々、見受けられるため、より一層楽しめるのかもしれません。

 

バカリズムワールド全開の会話シーン

そんな本作の見どころは、なんといっても、バカリズムさんが手がけたリアルでコミカルな会話シーン

「銀行で働く女性たちの日常」という限られた設定のなかで繰り広げられる些細な会話劇には、誰もがクスリと笑ってしまう独特のおかしさがあふれています。

例えば、作品の冒頭、月曜日が憂鬱になってしまった私が同僚のマキちゃんと会話するシーン。「月曜日なんて休みにしてしまえば…」と語りだした2人が少しずつ大げさな提案を始め、現実離れしたアイデアを矢継ぎ早に出していく下りには、つい笑ってしまう不思議なおかしさがありました。

また、フィクションの物語ながら、いつの間にか、バカリズムさん演じる私が本物のOLに見えてしまうのも衝撃的。

会話の積み重ねが生みだすリアリティによって、まるで登場人物全員が実際に存在しているかのように感じられるのも、この作品が持つ不思議な魅力といえるのでしょう。

正直、コメディ要素が強い作風ゆえに人によってはチープな印象も受けるかもしれない本作。しかし、時折、挟まれる社会風刺的な会話シーンには単なるコメディ映画では終わらないような深みも感じられます。

実際にOLとして働く女性が共感することは間違いないですし、男性の皆様にはOLになったような気持ちで楽しんでもらいたい興味深い作品でした。