「グラン・トリノ」のレビュー。元気が出ない人も見やすい、大人向けの絵本のような映画

映画レビュークリント・イーストウッド

今回紹介させて頂くのは、クリント・イーストウッド監督作「グラン・トリノ」。 

映画評論家の方々からも絶賛されている作品です。 

今の時代だからこそ見てほしい作品です。 

作品情報

監督、プロデューサー、主演 クリント・イーストウッド 

2008年、アメリカ映画 

キャスト

 ウォルト・コワルスキー – クリント・イーストウッド 

タオ・ロー – ビー・ヴァン 

スー・ロー – アーニー・ハー 

ヤノビッチ神父 – クリストファー・カーリー 

あらすじ 

妻に先立たれデトロイトの住宅街に一人暮らしとなったウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。 

ウォルトは自分の息子達家族に妻の葬式の時も無愛想に接し、息子達もまた、ウォルトにぎこちなく接していました。 

そんな偏屈なじいさんウォルトの家の隣にモン族の一家が引っ越してきます。 

分かり合えそうもないと、ウォルトはモン族を疎ましく思いましたが、モン族の一家の方も同様に、ウォルトにあまりいい印象がない様子。 

そんな中ウォルトの愛車のグラン・トリノが、隣のモン族の一家の息子、タオに盗まれそうになります。 

その事件から、ウォルトは関わりたくもなかったはずのモン族一家と関わっていくはめに…。 

この映画の心射抜きポイント

妻に先立たれ、寂しさや悲しみを感じているであろうウォルトに、息子達家族は心から寄り添ってはくれません。 

皮肉を言ったりあしらったり、ウォルトもウォルトでもうちょっと上手く接すればいいのに(笑)と思ったりもしましたが、それがなかなかできないのがウォルトなんですね。 

妻を失い、ウォルトの心の扉はより閉まるばかりでした。 

その扉をまず叩いたのは、教会の神父です。 

その神父はウォルトと妻の通っていた教会の神父で、妻から自分の亡き後、ウォルトを頼むと言われて来たのでした。 

ウォルトはもちろん心の扉を頑なに開こうとしません。 

それでも、神父は諦めずにウォルトを訪ねます。 

やっとウォルトが話を聞いてくれた時、神父はウォルトの目を見て言います。 

「生より死にずっとくわしいようですね 

この言葉にピンとくる人は、今の世界に多いのではないでしょうか。 

ウォルトとモン族の一家の出会いは最悪なかたちで始まります。 

最悪な出会い、その時点で関わりを完全に断ってしまうことだってできなかったわけじゃないんです。 

しかしウォルトは関わりを断つことをせずに、なんだかんだモン族の一家の「グラン・トリノを盗もうとした息子、タオをウォルトの家で償いに働かせてほしい」という申し出を受け入れます。 

心から100%の理解の心で、モン族の一家の申し出を受け入れたわけではありませんが、モン族の一家のものすごく強い押しに負けて、ウォルトは申し出を受けました。 

ウォルトもまさか本当にモン族の一家の息子のタオが実際に働きに来るなんて思っていませんでしたが、タオは毎日ウォルトの家の扉を叩いて働きに来ます。 

タオは実際に接してみれば「トロ助」とあだ名で呼びたくなるような、強くなさそうな少年です。 

しかしウォルトは、自分の孫達や近所の若い人達には見られなかった優しさがタオにはあることに気づいていきます。 

タオもまた、ウォルトの家で働いているうちに仕事を与えられ必要とされて、ウォルトの役に立ったという喜びや、ウォルトへの憧れや信頼を覚えるようになっていきます。 

この映画には教会が出てきますが、聖書の言葉に、 

「門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。 

だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。」 

という言葉があります。 

この映画を見ていて思い出した言葉です。 

神父もタオも何度もウォルトの扉を叩きました。 

1回目はダメダメであまりうまくいかず、しかしそれでも何度も扉を叩いて、ウォルトが無愛想でも、ぎこちなくても接し続けて、不恰好なもののだんだんと友達になっていきました。 

この映画に、人との関わり方を掲示してもらったように思います。 

人を愛したり信頼したり、つまり誰かと関係を築くのに、純度100%の美しさと優しさだけの心からスタートなんて、きっと誰もできません。 

価値観や文化の違いもあります。 

相手の言葉遣いや生活習慣に驚かされることもあるでしょう。 

それでも、その人のことが気になったなら、相手の扉を叩いてみる。 

何度も叩いてみる。 

そうやって完全じゃないまま、永遠に不恰好で不器用なまま、少しずつ愛し合っていく、それが人間だったらいいなと思います。 

この映画のウォルトとタオの関係で、他にも素敵なポイントがあります。 

ウォルトとタオは祖父と孫くらいの年齢差がありながらも、「師弟関係」というよりも「友達」のように見えるのです。 

ウォルトが分かっていることはタオに教え、ウォルトもまた、タオから今を生きるという感覚を教わっていきます。 

2人とも分かっていることが違うだけで、それぞれ2人とも分からない同士だったのです。 

図らずも、お互いに教わり合うというそんな相互関係が2人の間には出来上がっているのでは?と思います。 

こんな人におすすめ

今何かに悩んでいる人 

(私も悩んでいることがあって、ふらりとこの映画を見ました) 

シリアスなシーンも見たい人 

話はゆっくり進み、笑えるシーンもありますが、心臓を掴まれるようなシリアスなシーンもありメリハリがあります。 

人の心の機微を見たい人 

もう過去の自分だけではなく、今目の前に大事なものが拡がっていくような、そんな愛おしい感覚を味わえた人達の物語です。 

この記事のまとめ

クリント・イーストウッドと聞いて、知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。 

知らない人がほとんどいない所以が、クリント・イーストウッドの作品を見ると思い知らされます。 

いい監督でいい俳優、何故こんなに彼の作品はおもしろいのでしょう。 

グラン・トリノ、是非ご覧下さい。 

クリント・イーストウッド
[Kurinto īsutouddo]
Clint Eastwood