ラ・ラ・ランド分析レビュー、夢の都『ラ・ラ・ランド』幻想と現実

映画レビュー

『ラ・ラ・ランド』
2016年公開
出演…ライアン・ゴズリング(ドライヴ、ブレードランナー2049)
エマ・ストーン(ゾンビランド、女王閣下のお気に入り)
ジョン・レジェンド
J・K・シモンズ(スパイダーマン、セッション)
ローズマリー・デウィット(シンデレラマン、レイチェルの結婚)
監督…デイミアン・チャゼル(セッション、ファーストマン)
撮影…リヌス・サンドグレン(ファーストマン、007ノータイムトゥーダイ)
音楽…ジャスティン・ハーウィッツ(セッション、ファーストマン)

2016年度、米アカデミー賞では歴代最多タイの14ノミネートを記録。結果的に監督賞、主演女優賞、撮影賞、作曲賞、歌曲賞、美術賞の6部門を受賞した。

ストーリー

舞台は映画の都ロサンゼルス。物語の主人公は売れないジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)と女優志望のミア(エマ・ストーン)。
二人はこの街で出会い、偶然が重なりお互い惹かれあって行く。夢に一歩前進し、全てがうまく行くと思っていた。しかしセブが彼の友人キースのバンドに参加したことをきっかけに、すれ違いが生まれ、徐々に二人の間には距離が出来ていってしまう。結局、ミアはセブのもとを去るが、彼女には女優人生の転機が訪れようとしていた。

デイミアン・チャゼルのよるオマージュ

今作はミュージカル映画であり、古典映画へのオマージュがちりばめられている。鑑賞後感じたのは、ストーリー構成が1964年のフランス映画『シェルブールの雨傘』に似ていることである。実際物語中盤、ミアの戯曲の主人公の名前が「ジュヌヴィエーヴ」、シェルブールの雨傘の主人公の名前になっている。
さらに要所で、『ロシュフォールの恋人たち』『雨に唄えば』『ブロードウェイメロディ』など、挙げだしたらきりがないほどのオマージュが散りばめられている。
古典ミュージカル映画は、夢に向かってもがく主人公たちの物語を、音楽や歌に乗せて描いている作品が多い。監督のデイミアン・チャゼルはそういったミュージカル映画の大ファンで、元々はミュージシャンを志望していた。ジャズミュージシャンになることを諦めてしまった過去持っている。彼は自分の大好きな音楽と映画を通して、夢を諦めないことやそれに伴う代償。そういったものを作品に込め、観客、特に夢を目指し日々を生きている人々に届けようとしている。

セブとミア

セブを演じたのはライアン・ゴズリング。近年様々な映画に出演し、数々の賞も獲得している。彼はジャズピアニストを演じるために、実際にジャズピアノ演奏を習得した。劇中の演奏は、吹き替えではなく実際に彼が演奏している。演技では惜しくもオスカーは逃したが、悲哀に満ちた自然体な演技を披露している。
ミア役はエマ・ストーン。彼女はこの演技でオスカーを獲得した。彼女は実際のキャリアでも、ミアと同じような人生を歩んだ。オーディションには何度も落ちやっとの思いでハリウッドスターの仲間入りをした。そういった彼女の人生経験が今回の役に遺憾無く発揮されている。いわゆる完全に型にはまってしまったメソッド演技といってもいい。
二人の歌も吹き替えなしで実際に歌っているし、もちろんダンスも本物。フレッド・アステアやジーン・ケリー、エレノア・パウエルといった伝説のスターたちに捧げられているのだろう。

撮影と表現

冒頭のワンショットには驚かされた。実際にハイウェイを封鎖して撮影されたこのシーン。CGが使われていないので臨場感、説得力が尋常ではない。そして特筆すべきはタイトルインの後、カットを切らずにシーン1、セブがラジカセを聞いている姿につながる。たいていの映画はこういった場合、カットポイントを挟んでからシーンをつなぐ。まさに圧巻であった。
この作品でオスカーを獲得した、撮影監督のリヌス・サンドグレンはワンショット撮影の他に、フィルム撮影にこだわっている。今作の映像はどこかノスタルジックな少しざらついた質感の映像である。これは簡潔に言えば、撮影の際、絞り基準よりも暗めにしておき、編集の段階で明るさを基準に戻している。そうすることによって、このような雰囲気のある映像に仕上がる。これらの要素に素晴らしい照明も加わり、物語により一層の深みをもたらしている。

音楽

この作品の音楽を担当したのは、監督の大学の同級生ジャスティン・ハーウィッツである。彼もオスカーを手にした。作中に登場するすべての曲が素晴らしく、曲が単独で主張することは決してなく、物語に寄り添っている。まだ長編2本目ということで、今後に期待ができる作曲家である。

<まとめ>
2016年最も成功した映画といっても過言ではない本作。ミュージカルと映画の融合という先人たちが生み出した映画の形。近年ではミュージカル映画がヒットしないというジンクスがあったのだが、それを見事に打ち破った本作。ぜひ古典ミュージカル映画と一緒に鑑賞していただきたい、愛に溢れた一本である。